キャットツリー

50cm角の板を4分の1だけカットして、90度ずつ回転させながら1本の柱に留めてある。雑誌などでは「fauna+designのキャットツリー」と呼ばれている。以後何十本もつくることになる、その最初の1本。

多くの人が登るための道具だと思っているが、そうではない。頭上のキャットウォークから床まで、降りるための装置としてつくっている。降りるのは簡単で、登るのは難しい。上りは次の板が目の前に現れないので、人が上手に誘導して教えてあげないと登れない。

この家には板のピッチが違うものが4本ある。@330、@370、@380、@430。どれが一番使われるかを見るために、わざと全部変えてあった。登るのに適した段差は380。

階段のはずが、猫には昼寝の場所

猫と住む家。The Cats’ House 2009 プレイルーム。廣瀬慶二設計によるキャットウォークと猫の遊び場。
猫と住む家。The Cats’ House 2009 プレイルーム。廣瀬慶二設計によるキャットウォークと猫の遊び場。

■キャットツリーは「階段」のはずなのですが、人間が考えたそんな用途は猫達にはどうでもよくって、昼寝の場所として使うのはもちろんのこと、写真のように監視台にしてみたり、支柱の部分を枕にして寝てみたり。。。

■The cat tree is supposed to be a "staircase," but such human-intended purposes mean nothing to the cats — not only do they use it as a napping spot, but also as a watchtower or a pillow to rest their heads on the posts, as in the photo…

猫と住む家。The Cats’ House 2009 ハウスツアー。廣瀬慶二設計による猫と住む空間。
猫と住む家。The Cats’ House 2009 ハウスツアー。廣瀬慶二設計による猫と住む空間。

■このキャットツリーは、1階から2階、さらにロフトまで一気に上ったり下りたりできるように、高さは6mもあります。

■This cat tree stands 6 meters tall, allowing cats to go up and down between the first floor, second floor, and loft in one go.

猫と住む家。The Cats’ House 2009 ハウスツアー2。廣瀬慶二設計による猫と住む空間。
猫と住む家。The Cats’ House 2009 ハウスツアー2。廣瀬慶二設計による猫と住む空間。

■運が良ければ、キャットツリーに「ねこが鈴なり」になって出迎えてくれます。これぞまさに「キャットツリー」猫たちは上から順番に[かい][ちなつ][たま][まる][れん]です。

■If you're lucky, the cat tree is "bursting with cats" to welcome you — this is truly a "cat tree." From top to bottom: Kai, Chinatsu, Tama, Maru, and Ren.

猫と住む家。The Cats’ House 2009 ハウスツアー2。廣瀬慶二設計による猫と住む空間。
猫と住む家。The Cats’ House 2009 ハウスツアー2。廣瀬慶二設計による猫と住む空間。
猫と住む家。The Cats’ House 2009 ハウスツアー2。廣瀬慶二設計による猫と住む空間。

■再び[れん君]に登場してもらってキャットツリーの登り方を見せてもらいましょう。1/4だけカットされた正方形の板が90度ずつ回転しながら支柱に固定されているので、猫も回転しながら登ります。

■Let's have Ren show us how to climb the cat tree again. Square boards cut by one quarter are fixed to the pole while rotating 90 degrees each time — so the cats spiral upward as they climb.

ディテール — 50cm角の板を、90度ずつ回して1本の柱に

ここから下は『ペットと暮らす住まいのデザイン 増補改訂版』(丸善出版、2021年)に収めた、この家の詳細図と解説です。図面を公開している理由はキャットウォークのページに書いています。

置き場所にルールはない。キャットウォークにつながってさえいれば

キャットツリー(キャットタワーなどとよぶこともある)を建築として家屋内に導入する際には、必ずキャットウォークに接続するように考える。しかしその設置場所に対しては厳密なルールを定めていない。全体計画の中でのキャットツリーは省スペースで設置される階段としての扱い、または猫の見張り台にすぎないので、近辺のキャットウォークに接続されてさえいれば、どこにあってもよいのである。

ここで紹介するものは、猫と美しく暮らす家にふさわしい象徴的な形を追求して試作を重ね完成させたキャットツリーのデザインである。50cm角の板を4分の1カットしたものが90度ずつ回転して一本の支柱に固定される形はこれ以上ないほどシンプルで、猫がそこに佇む姿も美しい。しかし、念のために解説しておくと、この形式は降りる動作には適しているが、登りには向いていない。作業記憶が優秀とはいえない猫の中には、いつまでたっても登る方法を習得できない個体が存在する。登ることに関しては、この形状ではなく、普通の階段を別の場所に用意してあげるほうが、シニア猫にとっても親切だといえる。高いところへ行きたいという欲求は、歳を重ねても消えない。消えないのに行けなくなることが、猫のプライドを傷つける。歳をとってこの形式が「見張り台」としてしか使えなくなったときのために、同じ高さへたどり着ける別の道をあらかじめ用意しておく。それが猫の尊厳を守るということである。

ディテールのポイント

  • ここで紹介しているキャットツリーについてはキャットウォークのページの図12と一緒に見てもらいたい。実験的に板のピッチをすべて変えてみた結果、下りに関しては@330〜@430mmまで使用頻度に大差はなく、登りについてはキャットツリーCの@380mmがもっともよく使用された。おそらくこれが適正寸法だろう。

図面

キャットツリー4本の断面詳細図。A(@370・最大高さ5,800)、B(@330)、C(@380)、D(@430)。1FLから2FLまで2,800、2FLから軒高まで2,650。
プレイルーム(2階)の平面詳細図。キャットツリーA(1階から・@370・猫穴あり)、B(@330)、C(@380)、D(@430)の4本の配置。910mm・1,820mmグリッド。

図・文:廣瀬慶二『ペットと暮らす住まいのデザイン 増補改訂版』丸善出版、2021年
第3章「ペットと暮らす住まいのディテール」より「キャットウォークに接続するキャットツリー」

図から読める寸法

  • キャットツリーは4本。板のピッチは A=@370/B=@330/C=@380/D=@430
  • キャットツリーの最大高さ:5,800mm
  • 踏み板の材:パイン集成材 t=25、CL塗装

関連するページ