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“猫15匹、犬5匹の家” [廣瀬慶二] 2/2
生物としては24個体存在するこの「大家族」の新居に対する設計上の要望は、
「大人3人がペットと住む家」ではなく、
「猫の家」を創ってほしいというものでした。
(もちろん犬についてもありますが、サイトの性質上ここでは割愛します。)
「普通の家」的な事柄は二の次で良い。むしろ「普通の家」とは何なのですか?と真剣に問われた際には、 驚きとともに、私の中で“何か外れた”様な気がしました。気のせいでなければ。 さて、「完全室内飼い」で10匹以上の猫たちを、長年にわたって適切に育ててきた H家の皆さん(特に奥様)から学んだことは多く、 「“限定空間”でのネコの行動学」を「建築」に結びつけ、 ネコのための意匠や装置を考案する設計中の毎日は、デザイナー冥利に尽きる幸福な時間でしたが、 「ネコの家」の中に「ヒトの住まい」を挿入するのにはかなりの労力を費やしました。
そもそも、家を設計しているのに、人間の居場所について悩むこと自体が「普通ではない」気もするのですが、
「普通の家とは何なのですか?」という問いに対して、非常に合理的に説明がつく形で、
リビングルームとダイニングルームは、あっけなくその存在意義を失いました。
設計期間中は、「無いものを創造する」という行為ゆえに、様々な意見の衝突がありましたが、 それも良い思い出で、振り返ってみると、Hさんの様な御家族と関わることは、 この先、もう無いのではないかと、時々感傷的な気分になったりもします。 そんなこんなで、近代動物行動学を確立したコンラート・ローレンツに翻弄された 妻のマルガレーテの心境が少なからず分かったような気がしなくもないのです。 最後に、このサイトのために長時間の撮影に協力していただいたH家の皆様に、深く御礼を申し上げて 私の文章は終わりにさせていただきます。 [廣瀬慶二/Fauna+DeSIGN] |
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